卓越した技術と抜群のトレンド感覚で絶大な支持を集める、人気カルジェリストを取材するこのコーナー。
カルジェルと非常に長い付き合いのある田賀美鈴先生のご登場です。
「爪飾工房」のサロンワークを通じて若いネイリストへのメッセージを伺いました。
8年の進化 サロンスクールメニュー
——8年で特に変わった、進化したとご自身が思われているところは?
ラインのクオリティと、スピードですね。
私のサロンには、常連の方と新規の方で半分ずつぐらいいらっしゃいます。
新規の方も年に何名かお越しいただいているのですが、その半分以上はネイルサロンのオーナーさんやネイリストさんです。
皆さんはレッスンとしてお越しいただくことが多いのですが、お聞きすると、「時短のコツ」、つまりどれだけの速さで施術をこなしているかを知りたいというのが目的のようです。
これは、ハンドペイントアートがパッと見ただけだと、すごく時間がかかると思われているからだと思います。
一方で、私自身は時間がかかるのが大嫌い。
2時間以上はお客様もお手洗いに行きたくなるし、なによりお客様の時間がもったい。
1回のセッションは、長くかかっても2時間~2時間半が限度と考えています。
そうなると、
- アートのバリエーションを増やす
- スピードを上げる
これを同時にやっていくしかないと思っています。
——実際にネイリスト向けには、どういったコースを提供しているのですか?
ネイリスト向けには、ネイルアートレッスンを用意しています。
「ネイルアートレッスン on ハンド」と「ネイルアートレッスン on チップ」の2種類です。
チップのほうは、決められた時間でサンプルから選んでもらったネイルアートを私がネイルチップに描いて、完成したチップを持ち帰っていただくものになります。
これは、短時間でたくさんアートの種類を見ることができます。
もう一つがハンドです。
来ていただいた方の爪10本に、お手入れ、ジェル塗り、サンプルから選んでいただいたネイルアートを施術するレッスンになります。
そこでは、実際にどういう風に手を支えているのか、どのタイミングで何をするのかとか、事細かに見られるので好評です。
5:1くらいで、「ネイルアートレッスンonハンド」を選ばれる方が多いですね。
いま日本全国をレッスンしながらまわっているんですけど、それも「ネイルアートレッスン on ハンド」を全国のネイリストの方、ネイルにご興味のある方に体験してもらうことを目的にしています。
——ネイリストさんがいらっしゃると、どういう質問が多いですか?
施術中に質問してもらう形式でお答えしています。
一番勉強になったと言われるのは、施術の時間配分です。
何分でお手入れが終わって、何分でクリアジェルが終わって、アートのときにああいうこともしてこういうこともして、という部分ですね。
具体的には、「爪のお手入れに思ったより時間をかけていたのが興味深い」等の感想をいただきます。
そのあとクリアを塗ったら、「お手入れがしっかりしてるから、こんなにつるつるに塗れるんですね」、「所作がのんびりして見えるのは筆数が少ないせい」、「セルフレベリングさせるとこんなにツルっとするのか」等、施術を見ることで自分が持っていた疑問の答えを見つけていただくことも多いです。
私のアートは細かく描きこむタイプなんですが、そのためにはある程度のスピードも必要です。
それを実行するためにはまず爪のお手入れから。それに気づいていただけたら嬉しいです。
「キレイなアート」=「しっかりお手入れをすること」に直結していると、実際にみてもらえると実感してもらえると思います。
あと、共通してよく言っていただくのは、筆に迷いがないということですね。
「ここから描く」と最初の一筆がなかなか決められないものなんですけど、同じモチーフを何度も描いていると、スラスラ描けるようになる。迷わなくなるんですね。
これはひたすら経験です。ネイルアートに限ったことではないですけれど。
なので、お手入れをキチンと行い、土台を丁寧につくること、経験を積むことで、素早くキレイなアートが作れるようになると思うし、レッスンにいらっしゃる方にそこに気づいていただければと思います。
これからの若いネイリストへ
——今後の展望についてお聞かせください。
まずは、先程も話に出た全国を回ることです。
全国で施術をして、ぜひ体験していただきたいです!
「10年後に消える職業」ってよく聞きますが、あれの毎度ネイリストを入れてくるんですね。
ちょっと腹が立ちますよね。
私は、全然消える予定がないと思っています。
ネイルアートはシールやプリントマシーンで代用できるようになると思われているからだと思うんですね。
もちろん、ある分野でのネイルアートは、そうかもしれません。
ただキレイなネイルアートを作る爪のお手入れや土台づくりは、お客様お一人お一人微妙に違うもの。
これには人の手が一番良いと思いますし、サロンに来てリラックスしていただくことは、機械の代用が難しいと思います。
サロンに来るのは、効率化ではないんです。
みじん切りより、フードプロセッサーのほうが早いという捉え方ではないんです。
ただ、当の私たちがどうか。
面倒だからなるべく早いアートを知りたいとか、難しそうに見えて簡単なアートを知りたいとか、最近のレッスンでそういうリクエストって多いんですよ。
そんな話を本にも描いたんですけど、よく考えたらお客様も読むんだなって思って、消しました(笑)
こういう現状を踏まえて、私ができることはなにかなって考えたんです。
それで、ネイルってものすごく楽しいお仕事で、これから発展していくお仕事でもあることを伝えたいと思いました。
自分で楽しくできるし、自分で発展させることができる将来性のある仕事であることを知ってもらうのが、いまの第一目標です。
そこに、日本人独特のホスピタリティが加われば、海外展開もできる良いお仕事になると思います。
しかも、机ひとつでできるので、ヘアほど器材の用意もいらないわけです。
だから、ちゃんとしたネイリストがどんどん増えれば、その施術を目当てに海外からも人が来ると思うんですね。
これから大きくなる仕事だと思うんですけど、そのためにはまずネイリスト本人に楽しいと思ってほしいし、自分の仕事に価値を見出してほしいと思っています。
前の本を出したときが30半ばくらいでした。
いま、40半ばですが、体調にさえ気をつければ、また更に(ちょっとずつかもしれないけど)伸びていくと私は思っています。
そう考えたら、いま20代の人たちって、無限の可能性を秘めているんです。
だから、1本とか片手だけじゃなくて、10本アートを体験していただいて、少しでも可能性や、ネイルの楽しさを感じてもらえばいいなと思っています。
そのために、日本全国をまわりたいと思っています。
——最後に、本のPRをお願いします!
テクニック30種類を選んで、それぞれ4種類ずつアートを掲載しています。
まずは、テクニックをお楽しみいただけれと思います。
ほかにも見どころとしては、他の先生方がプロディースしている商品とのコラボがあります。
また、今回も私の妹にハンドモデルを頼んでいます。
ポージングの限界まで挑戦しているので、ぜひ注目してください(笑)
また、今回は集大成なので、15年近くお付き合いのあるフォトグラファーに頼んでおります。
カルジェルの宣材も担当されている方です。
本のデザインも元々モガブルックで、同僚だったネイリスト兼グラフィックデザイナーの方にお願いをしています。
新旧それぞれの友人に手伝ってもらいながら、本作を仕上げております。
写真もたくさんあるんですけど、漫画も入っております。
本の最後には、本全体のテーマになっている言葉を載せています。
これは、もう15年くらい前から通われているお客様からいただいた言葉で、プレッシャーでもあり、理想的でもあり…。
マンネリしそうなときも、いつも思い出す言葉です。
これもぜひ見てもらいたいと思います。
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