卓越した技術と抜群のトレンド感覚で絶大な支持を集める、人気カルジェリストをインタビューするこのコーナー。今回は、ネイリスト以外にも書道家、水墨画家、墨デザイナーといった肩書きを持ち活躍する、蓮水(れんすい)さんにご登場頂きました。書道家の武田双雲さんと武田双龍さん、水墨画家の小林東雲さんに師事し、これまでに多くのアート作品を発表。ネイリストとして働く傍らで、ジャンルの枠を超えたマルチなアート活動を行なう注目のアーティストなんです。独自の感性で“和の心”を表現する蓮水さん、彼女が描くネイルアートの世界を覗いてみたいと思います。
これまでのキャリアと活動内容
——蓮水さんのこれまでのキャリアや、活動内容について教えてください。
7歳からスタートして、大学生位まで書道の世界にいました。その後、書道家としてもっと幅を広げてアートの分野でも活動してみたいと思うようになり、そのきっかけ探していた時に出会ったのが、武田双雲さん。書道をアートとして捉えてユニークな活動されていた双雲さんに刺激を受け、「彼のようなアーティストになりたい」と思い、門下生になりました。その後、活動を続けるうちに水墨画と出会い、“墨で描くアート”というところにたどり着き、同時にネイルの世界へ進みました。とにかく枠に収まるのが嫌だったんだと思います(笑)。
——ネイルに興味を持ったきっかけは?
今でこそ多くの女性書道家さんが活躍されていますが、当時はそこまでではなくて、“女性が活躍でき輝ける場”というのに漠然とした憧れがあったんです。そういった分野で何かもう一つ技術を身に付けたいと思っていた時、たまたま観ていたテレビでネイルの特集をやっていて。それを見て「ネイルって面白そう!」って興味を持ちました。手先の器用さには自信があったので、これなら仕事にできるかもって飛びついたんです。
——カルジェルとの出会いはどのようなものだったんですか?
きちんとした知識と技術を身に付けたかったので、研修制度の整ったサロンを探していました。そして見つけたのが、カルジェルのトレーニング制度を導入しているサロン。そこで働いている先生たちはみんなエデュケーターの資格を持っていて、自分もやるからにはそこを目指したいと思ったので試験に挑戦しましたが、これが思った以上に難易度が高くて(笑)。当時カルジェルはすごく人気があって、受験希望者の倍率も高かったんです。試験を受けること自体も大変だし、試験自体も簡単なものではなかったので資格取得までに時間がかかってしまいましたが、その分だけ自分の自信に繋がりました。サロンにも技術レベルの高い先輩がたくさんいて、そこで学べたことはすごく良い経験となりました。その後、サロンでの勤務を経て独立し、4年ほどこちらのサロン(※取材場所)を経営しています。
ネイリスト×書道家×ママ
—現在はどのようなスタンスで活動を行なっているのですか?
ネイリストとして、書道家としての活動は半々位ですね。実は最近出産したばかりで、生後3ヶ月の子供を育てながら働いています。
——生後3ヶ月!? 一番大変な時期なのでは?
出産から約1ヶ月で復帰して、お客様からも驚かれました(笑)。サロンからすぐ近くの場所に引っ越したことと、主人や母の協力もあって今のところは問題なく仕事を続けられているので、今の環境にすごく感謝しています。現在はネイルの仕事をしながら自分の作品作りも行なっていて、ちょうど今日本が世界から注目される2020年に向けて発動した「KIMONO PROJECT」という企画のネイルアートを手掛けています。世界196ヵ国をイメージした着物を制作して日本の伝統美をアピールするプロジェクトで、私はその着物に合わせたネイルデザインを担当。ちょうど今60着位の着物が仕上がったところ(※取材当時)で、まだまだ時間は掛かりそうですけど。
お客様と自分の感性が共鳴する「アトリエ」
——ネイルサロン業の傍ら、色々な分野で活躍されているんですね!
私、こちらのサロンのことを「アトリエ」と呼んでいます。ネイルという枠に縛られず、様々なアート作品を生み出していけたらという想いがあって。ネイルデザインも創作活動の中で行う墨を使った作品も、キャンパスの大きさが違うだけ。私にとっては同じアートなんです。もちろんネイルの場合はお客様がいて、という前提があるので厳密には創作活動とスタンスが違いますが、基本は同じ。このアトリエは自分にとって“お客様と自分の感性が共鳴する場所”なんです。サンプルなどは一切置かず、お客様1人1人に合ったものをご提案する、というポリシーでやっています。
——ネイルデザインのインスピレーションはどこから?
想像力や感性を研ぎ澄ませるための努力は常にしています。独立して4年目ですが、その前も銀座のサロンに勤めていたので銀座歴は長め。今でも空き時間があると“銀ブラ”……あ、死語ですかね(笑)。銀座をブラブラしています。一流のものが揃っている街だし、ギャラリーも多い。街並みや建物も綺麗なので、見ているだけで刺激を受けます。例えば、エルメスやシャネルといった高級ブランドのショーウィンドウだったり、WAKOなどの高級食器の絵付けだったり。あとは、ランチもなるべく外で食べるようにしています。お皿への盛り付け方など、料理からのインスピレーションも受けていますよ。サロンで店長をやっていた時は、スタッフたちにも外に出てランチをとるようにと促していた位。ディナーは高いけどランチなら1000円位で食べられますし、そういった刺激を受けることも必要だと思っています。
——銀座という土地ならではの刺激も多そうですね。お店ではどういった客層の方の、どういったオーダーが多いですか?
20〜70代の方まで、OL・主婦・自営業など様々な層の方がいらっしゃいます。銀座という土地柄もあるのかもしれませんが、個性的でこだわりのある方、目の肥えたネイル上級者の方が多いですね。完全予約制なので常連の方やご紹介が多く、5〜10年来のお客様がほとんど。その方の趣味嗜好やライフスタイルを知った上でデザインをご提案する、というパターンが多いです。あとは、その方が来店した時にどういった気分でいらっしゃるのか、ということも重要視しているので施術前の会話と雰囲気は大切にしています。トレンドは常に意識して技術もアップデートしていますが、基本的にはお客様のライフスタイルやニーズに合うようなデザインをと考えています。
ネイリストとして大切にしていること
——ネイリストとして大切にしていることは?
お客様に笑顔で帰ってもらえること。そして、その方のライフスタイルがより豊かになるように、と思いを込めてやっています。コンセプトはずっと変わっていません。また、爪を見ればその人だとわかるような、その方の個性を引き出せるものを作りたいとも思っています。お客様のニーズには可能な限りお応えしますが、合わないものはそうはっきりお伝えすることもありますし、もう少しこうした方がいいといったアドバイスをさせて頂くことも。ただ、自分がどういうデザインをしたいとか、そういう押し付けは一切行いません。お客様にお店に来た時よりも明るい気分で帰ってもらえると、自分もハッピーな気持ちになれます。忙しくても疲れていても、ここに来たら元気になるって思って頂ければ嬉しいですね。
——これからチャレンジしていきたいこと、今後の展望などを教えてください。
“ネイルアートと墨の融合”を目指した作品作りに励んでいます。もともと和物が好きで、和のテイストや素材をネイルに取り入れたりはしていたんですが、最近は、墨の作品にネイル素材を取り入れるといったことも試しています。ジェル筆のような細い筆を扱っている書道家はきっといないはず(笑)。和紙の上でミクロな絵を描くことに挑戦中です。地味な作業ではありますが、もともと細かい作業が好きなので苦ではありません! ちなみに、今日のネイル(爪を見せながら)には“七宝(しっぽう)”という和の技法、本物の金箔を使っています。
ネイルアートと墨の融合
——“ネイルアートと墨の融合”ってすごくユニークですし、海外でも人気が出そうですね。
はい。海外旅行へ行かれるご予定のお客様には推奨しています。特に、漢字をデザインに取り入れた“書ネイル”は結構人気です。このネイルをして海外に行くと外国人の方から注目を集めること間違いなし! 会話のきっかけや話のタネにもなるのでオススメですよ。これからも様々な和の素材や技法を使ったものを試していけたら、と思っています。
過去にはこんなカルジェリストさんにもインタビューしています♪
蓮水さん オフィシャルサイト
Sumi-e Artist RENSUI official website
http://rensui.tokyo/