卓越した技術と抜群のトレンド感覚で絶大な支持を集める、人気ネイルサロンのカルジェリストにインタビュー!今回は、ヘアからネイル、エスティックまで幅広いジャンルの美容をひとつのサロンに取り入れた“トータルビューティサロン”の先駆け的存在である「uka」で、代表取締役社長を務める渡邉 季穂さんが登場。モード誌や美容雑誌の撮影で引っ張りだこの渡邉さんが語るネイルトレンドから、海外におけるネイル市場まで、じっくりとお話をお伺いした。
ネイルのトレンド・ネイルデザインについて
現在のネイルトレンドを教えてください。
最近では、誰もがデザインをする時代ではなくなっていて、色を楽しむ方が非常に増えていると感じています。単色塗りも人気ですし、爪の上にデコラティブなものをのせるのではなく、色と色を組み合わせたり、線であったり、平面的なアートがトレンドですね。好みがあるので、立体的なネイルをされる方ももちろんいますが、短い爪で色を楽しむ方が増えている、という印象です。
メイクの世界では、これまで主流だったツヤ感から、2016年秋はマットな質感が再び注目を集めています。ネイルにも、同様のトレンドは見られますか?
ネイルでも、質感や素材感のバリエーションの幅は、今後更に広がりを見せていく印象はありますね。一昨年くらいからマットネイルなどは人気でしたし、元のネイルの上に重ねることで違った質感へと変化させるマニキュアも増えています。その流れに伴って、“色と質感を楽しむネイル”が主流になっていくのではないかと。ただ、「メイクはこうだから爪もこう」といった連動性を持たせたスタイルより、あくまで「自分らしいネイルを作る」ということがスタンダードだと思います。個性的で自分らしいネイルの中に、今っぽさを取り入れるスタイルが現在のトレンドですね。
ネイルを通じて自分らしさを表現する女性が増えているということですか?
そうですね。ネイルは自分のライフスタイルやファッションに合わせて、自分らしさを表現するものだと思います。日常的なものなので、自分の生活にマルチに合わせやすいデザインや色を選ぶ傾向も強いです。流行りのネイルだとしても、自分のスタイルに合っていなければ、丸ごと取り入れたりはしないですよね。そこに引き算や足し算をして、自分に合うものを見つけていく。「uka」に来るお客様も、「毎回カラーは変えない」というように、自分らしいこだわりを持ってネイルを楽しまれる方は多くいらっしゃいます。ネイルは“自分らしさを追求する時代”に入りつつあるのかなと感じますね。
トータルビューティサロン「uka」について
改めてですが、「uka」のサロンコンセプトを教えてください。
「うれしいことが、世界でいちばん多いお店」をコンセプトに掲げています。サロンの中で、どれだけお客様の満足度を高めていけるか、その満足度をお客様の表情に映せるか。帰り際、自信がみなぎった表情で「また来るね」と言ってくださる笑顔が、私たちは一番美しいと考えています。その自信や笑顔を引き出すために、技術だけでなく、お客様が心地良いと思う最高の時間を提供したい。見た目だけでなく、内面からにじみ出る美しさを引き出すことを目標としています。ネイル、ヘア、エステティック、まつ毛エクステ…いずれの部門にしても、技術者として高い技術を提供するのは当然です。プラスα、高いコミュニケーション力でおもてなしをすることで、お客様の満足度を高めていくサロン作りを目指しています。
「uka」はなぜ、トータルビューティサロンを目指すようになったのでしょうか?
私は、昔からファッションがすごく好きでした。特に、トータルで見たときのバランスがいいスタイルが好きで。私がネイリストを志した頃は、ネイルサロン自体も少なかったのですが、高価な指輪や時計をしているのに、爪は手入れをしていないという方が非常に多かったんです。その状況を見て、「爪もキレイにしたら完璧なのに」とよく感じていました。また、元々父がヘアサロンを経営していたのですが、ヘアをしている最中に手元が空いている状況を見て、「横でネイリストが入ってネイルをしてあげれば、時間をうまく使えるな」と考えたり。ネイリストとヘアスタイリストとお客様の3人の空間を作り出せば、皆で会話も楽しめるなと。そんなイメージが漠然とあったんです。ちょうどその頃、ネイルの勉強中にLAを訪れた際、海外は正にトータルビューティが一般的で。ネイリストやヘアスタイリスト、メイクアップアーティストが一緒に働いているサロンを多く見かけました。お客様の髪を乾かしながらペディキュアをして、みんなで会話を楽しんで…。それを見たときに、「私がやりたいことはこれだ」と確信したんです。そこでトータルビューティサロンを目指すようになりました。
「uka」のお客様も、一度に様々な施術を求められる方が多いですか?
「忙しいから、髪もネイルも全てやりたい」とご来店される方はいますね。同じサロン内でさまざまな施術を受けられる便利さを実感されて、「時間を作ってくれてありがとう」と感謝の言葉を頂くことも多いです。ただ、お客様の中には「今日はリラックスしたいからペディキュアだけやりたい」と希望される方ももちろんいらっしゃいます。そういった声にお応えできる施術スペースも設けていますし、お客様のニーズに合わせた空間やメニュー作りを大切にしています。
ジェルネイルの魅力
ネイルに話題を戻しますが、ジェルネイルをすることの魅力は何でしょうか。
ジェルネイルの最大の魅力は、美しいツヤと、爪を保護する機能を備えているところにあると思います。透明のジェルを塗っているだけでも美しいですし、ジェルの上にマニキュアを塗ることもできるので、自爪をプロテクトしながらマニキュアも楽しめます。また、ジェルはネイルアートを自由に楽しめ、そのデザインを長くキープできるのも良いですね。
「uka」は過去に、フランスの「ボンマルシェ」や「コレット」に限定出店をされていましたが、日本のネイルアートに対する海外の反応はいかがでしたか?
日本のネイルアート文化は、まだ幅広くは受け入れられていませんが、若い女の子たちを中心に興味を持たれ始めていると思います。ただ、「コレット」や「ボンマルシェ」でやったときも、アートを見せると「すごいわね、すごく東京らしい!」と興味を持ってくれるのですが、「でも私は赤の単色ネイルで」と返答が返ってくる。NYでもそうでした。でもアート自体に興味は持っているし、その技術に一目置いているのも事実です。これまでネイルサロンでマニキュアを楽しんでいた人が、次第にネイルアートに興味を持ち始めている段階なので、伸び白はあると思います。ですが繊細なアートを描ける技術力のあるネイリストが、海外は圧倒的に少ないんです。だからこそ、日本の技術は高く評価されていて、日本人ネイリストは世界で求められています。海外では、マニキュアを使って40分ほどで終わるネイルサロンが主流なので、日本のように2時間かけてアートして…というハイレベルなサービスも、海外のネイリストのテクニックが伴えば需要が高まるのではないかと思います。
海外ではマニキュアが主流ですが、ジェルネイルに対する反応はいかがだったでしょうか。
ジェルネイル特有の高級な質感は好印象でしたし、関心は高いと思いますね。ただ、以前NYでイベントをやった際に「なぜジェルではなく毎週マニキュアをするの?」と聞いたら、「根元が伸びるのが嫌だから」と言われたことがあります。「先端のネイルが剥げるよりも根元が伸びて、しばらくケアをしていないと思われることが嫌だ」と言うんですね。そういう考え方もあるんだと驚きましたね。ジェルネイルだとやはり、根元が伸びて目立つので、海外でヒットするにはそのハードルを超える必要があると思います。ただ、日本でも根元がクリアなフレンチネイルは、爪が伸びても分かりづらいので人気がありますよね。同様に海外でもフレンチであれば、ジェルネイルを選ぶ方が増えるのではないかと思います。
カルジェルの魅力
フレンチネイルが、海外の方にジェルネイルの良さを知ってもらえるキッカケになりそうですね。
私も初めて「カルジェル」に出会った時に、「カルジェル」のサロンでフレンチをやってもらったのですが、その艶やかさと、白のフレンチラインが欠けない美しさにすごく感動したのを覚えています。当時は、マニキュアでのネイルアート料金が非常に高く、それでも2日目にはフレンチ部分が剥がれるということがざらにありました。でも、「カルジェル」でやれば薄付きで、フレンチのデザインが長持ちして、ツヤも保てる。これがジェルの良さなんだと感動して、「uka」ではすぐに「カルジェル」を取り入れました。
ジェルネイルの中でも、「カルジェル」の良さは他に何かあるでしょうか。
空気を通過させ、かつソークオフジェルなので爪に優しいということ。薄付きで定着力が高く、しなやかさや弾力性があるのも魅力ですね。特に「カルジェル」はベースが優秀で、本当に爪が痛みにくいんです。周りのネイリストたちも「『カルジェル』のベースはピカイチ」と絶賛する人が多いですね。「uka」でも一番爪に密着するベースのジェルは、特に大切なものだと考えているので、「カルジェル」のベースは安心して使用しています。また色が混ぜやすいので、お客様の希望やその人の手肌の色に合った色を提案することも可能です。
カラーを混ぜるという点で、カルジェリストはどのように色の知識を習得すれは良いのでしょうか。
「黄味に合うのはこの色」といったように、基本的なカラーの勉強はもちろん必要です。でもその先は、センスなんですよね。色の作り方を磨くというよりは、色彩感覚を磨くということです。そしてそのセンスは、ファッションとうまくリンクさせるべきだと思います。今年のファッショントレンドや生地のテクスチャー、色を見る。美容であれば、新製品のアイシャドウやリップのカラーを見る。モノをたくさん見ることです。色を作る方法論は色彩学ですが、どんな色を生み出したいかという感覚は、どれだけファッションなどを見ているかによると思います。
ネイリストを目指したきっかけ
渡邉さんがネイリストを志したキッカケは何だったのでしょうか?
私は幼少期に爪や指の角を噛む癖がありまして、いつもささくれがある状態だったんです。そこで初めて友人にネイルサロンに連れて行ってもらいお手入れをした時に、自分がいじりたくなっていたところが、キレイにケアしてもらえたのが嬉しくて。さらにその上にカラーを塗ってもらい、仕上がった美しい手を見て感動したのを覚えています。ネイルケアをしてもらってからは、自然と噛む癖もなくなったんですね。「ネイリストってすごい技術だな」と驚きました。それで、ネイリストを目指すようになりました。
ネイルデザインのアイディアは、どのようなところから生まれますか?
私はすべてファッション誌です。例えばテキスタイルやバッグの装飾を見て、アイディアが浮かぶこともあります。必ず各シーズンのコレクションはチェックしていますね。「uka」でも半年に一回、NY、ミラノ、パリコレクションをもとにファッショントレンドの勉強会を開催しています。ファッションの方向性やトレンドカラーを見て、「じゃあネイルはどう合わせる?」という勉強をしています。
新人のカルジェリストが上達するために、何かアドバイスはありますか?
土台作りを怠らないことです。爪の形の整え方やキューティクルケアは、最初にしっかりと覚えた方が良いですね。ベーシックなケアができていると、その上に塗布するネイルは美しく仕上がります。輪郭や長さなど、爪の形がチグハグな上にアートをすると、バランスの悪いデザインに仕上がります。まずは爪の形の美しさ、ネイルケアが生み出す仕上がりの美しさにこだわってみてください。また土台作りがしっかりしていれば、ジェルネイルは長持ちしますし、結果的に爪も痛まなくなります。「ジェルネイルで爪が痛んだ」という声を聞くと本当に悲しくなるのですが、それはすぐに取れるような雑な施術がされていたり、取れてしまったからとお客様が自分でジェルを剥がしてしまうことが要因だと思います。その結果、爪がどんどん傷ついて弱くなってしまう。なので、ジェルネイルの扱い方やリスクをきちんとお客様に伝えられる、カルジェリストを目指してもらいたいです。いまカルジェリストに求められているのは、爪を痛ませないための知識を習得すること。その知識を元に、お客様にカウンセリングとアドバイスが出来ること。それができて初めて、美しい色やアートをのせる技術力を身につけてほしいですね。
ネイリストに向いている素質とは?
ネイリストに向いている人の素質は、何かありますか?
細かいことが好きな人は向いていると思いますよ。繊細な技術力はもちろん、こだわりがある人ですね。例えば「線を引くときは絶対にまっすぐにしたい」だったり、少しオタク気質な人とか(笑)。また私の持論なのですが、爪を噛んだり、過去に自分の爪をいじめて来た人はネイリストになると良いと思います(笑)。爪にコンプレックスがある人は、ネイルがもたらす美しさ、素晴らしさをより実感ができますし、それを他の人にも伝えてあげたいと思うはずですから。あとは、必ず手を握って会話をしなければいけない職業なので、人と会話するのが好きな人ですね。1〜2時間、ネイルをしながら会話を楽しんで、お客様から「ありがとう」と言われる環境に喜びを感じられる人。素晴らしい職業だと思いますよ。お客様と、ネイルを通じて何十年にわたって定期的に会い、共に成長できますから。自分を必要としてくれる人が何人にも増えていくというのは、人生において心強いですし、素敵な仕事だと思いますね。
長年、赤や乳白の単色ネイルや、フレンチネイルを続けているという渡邉さん。「カルジェル」の魅力を存分に感じさせるツヤのある爪先は、シンプルな中にノーブルさを感じさせる。